法の不知は害される 相続・義務・迷宮

法の不知は害される 刑法38条3項 

分かりやすく言うと「法の不知は許されない」ですね。
日本国内の法律一体どのくらいあるか知っていますか。法によって守られたり、生活を損なわれたり知っておくに越した事はないのですが、現在、日本には憲法を含めて約1,900の法律と約5,600の政令、省令など7,500近い法令があります。15,000の法令+条例、全て知っている人先ずいないでしょう。私たちが知らない(興味が無い)間に民主主義から超法律国家なっていました。裁判官、弁護士でさえも専門が別れているのですから、一般人が全てを知っている筈はないのです。専門家は専門外でも聞かれれば六法全集や判例を調べて答えることはできるでしょう。また一般人も図書館で調べることも出来るでしょう。しかし一つの法律が分かっても関連してくる法律まで知る由もありません。一つの法律から蜘蛛の巣状に枝分かれしていきます。

他の人が巻き起こした渦が、知らず貴方まで巻き込んでしまう。潜んだ法律の話です。

誰にでも起こる、降って湧いた難題に遭遇しないよう事前に備えたいですが。

相続にまつわる事例:相続する人が居ない

法定相続人:配偶者は常に相続人。その他、①子供 ②父母や祖父母 ③兄弟姉妹の順番で親族が相続人となります。
この人たちが普通相続すれば問題はないのですが、相続を怠ったら……。
社会的に問題にもなっていますが、空き家問題、放置土地、自治体も困っているでしょうが背景にはこんな事情もある様です。

法定相続人が相続放棄するとしないとに関わらず、相続しないと代襲相続が発生し、自分に相続権が回って来て、いやでも甥や姪の立場で叔父・叔母の相続人になるケースが発生します。
役場としては固定資産税など収税出来ないので「地方税法第9条、第9条の2」により相続代表人を指定し納税を促します。相続代表人は明文の中では「出来る」となっています。拒否したり、義務化の明文はありません。「出来る」の解釈は役場では教えてくれません。

私は法の専門家ではありませんが旧い身近な友人が相談に訪れた訳です。
相当、義務だ、財産の差し押さえだなどの不利益を言われた様で困っている様子でした。
順を追っての当事者のメモを見せて頂きました。

①当事者本人も驚いて役所に電話したそうです。
 何故納税通知書が来たのか。「地方税法第9条、第9条の2」により相続代表人に送付したとの回答。
 何故相続代表人に選任されたのか。20年前亡くなったの叔父の相続が、何の前触れも無く来たのは何故か、「地方税法第9条、第9条の2」により送付。
 相続人は何人いるのか。個人上保護法で教えられない。
 相続人の名前・住所等連絡先は、個人上保護法で教えられない。
 どうやって相続人同士で協議すれば良いのか、相続代表人が調べて下さい。
②この納付書は法定相続人の義務か、義務です。
 相続人全員の義務でしょう、集金は相続代表人がして下さい。
③義務を相続放棄すれば固定資産税の納付義務は無くなるから、相続放棄の手続きを当地の家庭裁判所に審議して貰って下さい。または弁護士に依頼して手続きをとって下さい。との回答。

その後家庭裁判所に相談の電話をかけたそうです。
「相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内」
相続放棄の申述書、標準的な申立添付書類
HPに申述書、標準的な申立添付書類があるそうです。
ですが記載漏れなど不備があった場合、審議しても許可されないそうです。一度不許可になると相続放棄は出来ないそうです。
弁護士に問い合わせてみたところ、相続放棄の手続き費用は7万円は掛かるそうです。

相当、義務だ、財産の差し押さえだと脅された様で困り果てていました。
相談を伺い不審な点があるので、「地方税法第9条、第9条の2」を調べました。確かに「出来る」と記載されています。しかしそこには
その指定をした相続人は、その旨を地方団体の長に届け出なければならない。この場合において、その指定をした地方団体の長は、その旨を相続人に通知しなければならない。
これは教えてくれなかった様です。
④相続人に心当たりは、親戚で連絡できないか、►10年以上親戚付き合いしていないし、遠い親戚は分からない。
⑤代表人の届けは出したのか、►出していない。
⑥役所はその旨相続人に通知しなければならない。►身近な兄弟からも連絡がないので、届いていない様だ。
⑦叔父さんが無くなって誰か相続代表人になっていた筈、役所からはその旨を相続人に通知したとすると、通知は受け取っているのか。►受け取っていない。
⑧借金・滞納金はあるのか、►分からない。
⑨土地・家屋の確認、固定資産税納付書に書かれている。
⑩土地家屋は欲しいのか、►欲しくない。
 欲しいと言っても相続人が1人にならなければ登記すら出来ないのだから、今となっては不可能だと思います。

googleマップで所在地を確認し、知り合いの弁護士に相談してみました。事務所へ行くと相談料を取られるので簡易的です。
相続放棄手続き、やはり7万円位です。しかしここで新たな法が連結していました。相続放棄しても固定資産税は免れるが、民法第940条第1項_管理義務は所有者が決まらないままだと相続放棄しても義務が残るのだそうです。崩壊・不審火、雑草、管理義務者の負担です。

残る手段、地方税法 第331条 市町村民税に係る滞納処分

滞納者が督促を受け、その督促状を発した日から起算して10日を経過した日までにその督促に係る市町村民税に係る地方団体の徴収金を完納しないとき。市町村の徴税吏員は、当該市町村民税に係る地方団体の徴収金につき、滞納者の財産を差し押えなければならない。

土地面積、土地相場、固定資産税の相続人個別負担金、管理義務相続人個別負担金を比較すれば、差し押えて貰った方が解決できるのではないか。この先も自分の物にならない、他の相続人も不明なら、相続放棄7万円払っても解決解決出来ないだろうし、これしか方法は無いのではと無責任ですが提案。

後日、私の仕事部屋から役所に電話して貰いました。ハッキリした回答が欲しいので失礼ですが電話録音の準備をしてからの問い合わせです。もちろん同席しました。
電話の通話録音は当事者なので違法では有りません。

質問内容は
Q1. 相続代表人は相続人の人数、連絡方法、教えて貰えないので集金も出来ないのでお断りしたい。
Q2. 相続代表人選任はその旨をその指定をした地方団体の長は相続人に通知しなければならない。通知したのか。
Q3. 固定資産税は相続人全員の義務であって、相続代表人が代わりに義務を負うものでは無い。
Q4. 相続放棄した後の義務の有無
Q5. 前相続代表人はどうしたのか
Q6. 滞納金はあるのか、借金はあるのか
  滞納金があれば滞納処分にして差し押さえで終わらせて欲しい

答えは
A1. 個人情報なので教えられない。相続代表人は法によって選任しているので。
A2. 選任の通知は全相続人に送っています。
  前相続代表人選任の通知は受け取っていないが……。そこまでは分かりません。
A3. 納付されない場合は不利益を被る可能性があります。
  立て替えは誰でも出来ます。ただし納付書持参者です。
A4. 固定資産税の納付義務はなくなります。
  以後の事は分かりません。
  管理義務があるのではと追い質問 分かりませんなのに有りますですか。
A5. 前相続代表人は亡くなっております。
  選任の通知は全相続人に送っています。届いてはいない様ですが。そこまでは分かりません。
A6. 滞納金はあります。納付義務も存在しています。
  滞納処分に関しては差し押さえは考えておりません。

  では、いつ迄続くのでしょう。分かりません。

とまあ、個人情報義務と分かりませんの役所の回答でした。役所ってこんなものですか。
役所が分からないのですから、当事者はもっと分からない筈です。拒否の理由は伝えたので、役所はなんと言ってくるでしょう。録音もしてますしね。一週間も連絡なければ納付書は配達証明を付けて返送すれば良いでしょう。吉と出るか凶と出るかは分かりませんが。そのうちに役所の方で考えるでしょう。

土地面積、土地相場は分かったので、差し押さえが実行されても資産の方が上回るでしょう。とりあえず払わずに放置した方が良い様に思いました。相続代表人は徴税吏員では有りません。所有できない物件に悩む事は有りません。徴税吏員は給料を貰っているのですから。

まさか関係ない債務で相続人の財産は差し押さえ出来ないでしょう。
友人と私の意見が一致し、幾らかは一安心した様です。大分悩んでいましたから。

永い年月が過ぎた後の問題なので解決方法は見つからないと思います。誰も犠牲には成りたくないでしょうから

平穏な暮らしの中で知らないところで起きている降って湧いた災難、好んで渦中に入る必要は無いと思いますが。複雑に作られた網の様な法律、一体誰の為の法律なのでしょう。そして市民に寄り添わない行政、空き家問題もこうして解決出来ないまま続いて行くのでしょうか。迷惑なのは巻き込まれた当事者です。

まだ、すぐには解決出来ませんが、私も推移を見守っていきたいと思います。早くこの問題から解放される様、役所に期待したいですね。
知らないところで起きている問題、読者にも訪れないとは限りません。同じ悩みを抱えている方にとっては参考にならなかったかも知れませんが、解決した時点で続きは執筆いたします。

追記

相続放棄をしても残る管理義務とは
相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけると同一の注意をもってその財産の管理を継続しなければならない義務を負います。
民法第940条第1項_管理義務

早い話が7、8万円払って相続放棄したとしても、尚義務は残るという事です。
建物の老朽化・崩壊、敷地の雑草等の管理。

相続人が不明なまま相続放棄をしても、残る管理義務は依然続きます。これは放棄出来ません。

これが「法の不知は害される」です。

 

 

 

 

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